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イギリスで進む“1人1本運動”と新しい森づくり
最近イギリスの自治体で、「japanese method」(日本式)と呼ばれる植樹プロジェクトがおこなわれていると話題になっています。
イングランド北西部のウェストモーランド・アンド・ファーネス自治体では、気候変動対策と生物多様性の維持をめざして「One Tree per Resident(1人1本)」運動を展開しています。

今後5年間で25万本の植樹を目標に掲げ、住民は自治体から無料で在来種の苗木を受け取れる仕組みで、庭や鉢植えでも育てられるものが用意されています。小さな庭や鉢植えにも合う苗も用意されているため、法人だけでなく個人でも気軽に緑化に参加できる点が特徴です。この取り組みの中で注目されているのが「japanese method」と呼ばれる日本式の森づくり技術です。
世界が注目する「Japanese method」とは?
「Japanese method」とは日本の生態学者・宮脇昭博士が提唱した“みやわきメソッド”のこと。在来種を複数まとめて高密度に植え、短期間で多層構造の自然林を再生する手法です。従来より成長が早く、生存率も高いことから、都市部の生物多様性向上やCO₂吸収に優れるとして世界で採用が進んでいます。
みやわきメソッドは、単に木を植えるだけでなく、その土地本来の在来種を、複数の種類で密植し、多層構造の自然林を人工的に短期間で再現します。従来の植栽では成長に100~200年かかるところ、みやわきメソッドならわずか30年程度で森本来の生態系バランスに近づくとされ、都市環境の生物多様性向上や気候変動対策、CO2吸収量増にも直結するのが強みです。

イギリスに限らず、オランダ、インド、アメリカでも「Tiny Forests(ミニフォレスト)」として取り入れられ、学校や企業敷地など都市の小さなスペースから森づくりが広がっています。
みやわきメソッドをガーデニングへの応用にも
みやわきメソッドは、日本の“鎮守の森”に代表される在来種の強さに着目して生まれました。その土地に合う植物だけを選び、1㎡あたり数本をまとめて植えつけることで、自然本来の森に近い環境を短期間でつくれる点が大きな魅力です。

ガーデニングの視点で見ても、狭いスペースでも多様性のある植栽が楽しめるというメリットがあります。住宅の小さな庭でも在来種を中心にポケットフォレストのような植栽をつくれば、昆虫や鳥が集まりやすく、地域の生態系を支える一助にもなります。
ガーデナーにとってのヒントと実践アイディア
- 1㎡ごとに数種類の在来植物を密植すると、初心者でも自然な雰囲気の植栽がつくりやすくなります。
- 植物選びには自治体や専門店が提供する在来種リストを参考にすると安心です。
- 企業ではCSRの一環として活用されるケースも増えており、地域と協力したミニフォレストづくりが今後さらに広がる可能性があります。
日本で深刻化するクマの被害と森づくりの意義
日本では今年、クマの出没が増え、大きな社会問題になっています。里山の荒廃や餌不足など複数の要因が重なり、生息環境が悪化していることが背景にあります。クマの主な餌でもあるドングリやブナといった広葉樹は成長に時間がかかるため、森の再生は即効性こそありませんが、中長期的には野生動物の餌場と生活環境を改善する重要な手段になります。

森づくりはクマだけでなく、地域の生態系全体を健全に保つためにも不可欠だと言えます。
まとめ
気候変動が深刻化する今、森を育て直すことは世界共通の課題になっています。森の再生や餌場整備はクマだけでなく、他の野生動物にとっても過ごしやすい生息環境を整えることにつながります。
日本発の「みやわきメソッド」が世界で選ばれている理由を見直し、地域の自然環境やご家庭・企業のガーデニングにも新しいアプローチとしてぜひ活かしてみてはいかがでしょうか。







