庭の土から見えてきた、地球の未来。異常気象と戦う微生物のお話
公開日
こんにちは🌸ニワナショナルの広報担当・市毛です。
私たちニワナショナルは、埼玉県上尾市を拠点に 「お庭から、くらしと仕事をもっと豊かに。」 をテーマに活動している会社です🏡🌿
お庭の手入れや緑の活用を通じて、地域の方々の毎日が少しでも前向きになるようなお手伝いをしています😊✨
広報を担当している私は、五感や環境、そして“らしさ”といったキーワードで物事をとらえるのが大好き。
日々の仕事の中で「これっておもしろいな💡」「もっと多くの人に知ってほしいな📚」と思うことがたくさんあり、ちょっとマニアックかもしれませんが、未来を考えるヒントになるかも?と思って、このブログで共有してみることにしました。
土の中には、たくさんの微生物が生活しています🌱
実は普段あまり意識しませんが―― 土の中には無数の微生物が生きていて、私たちの生活と深く結びついています。
例えば、
- 野菜や植物が元気に育つのを支えている
- 栄養を循環させている
- 水分を保ったり、病気から守ったりしている
目に見えないけれど、毎日の食卓やお庭の景色を支えているのが「土壌微生物」なんです。
そんな中でふと湧いてきた疑問があります。
「土の中にはいろんな微生物がいるのは知っている。けれど、干ばつや豪雨など異常気象で環境が大きく変わっているのに、微生物たちは関係ないのかな?」🤔
この素朴な疑問から、今回のテーマ――「異常気象と土壌微生物」について調べてみることにしました。
調べてみてみえてきた、異常気象と土壌微生物の危機🌍
いろいろ調べてみると、土壌微生物は異常気象にとても敏感であることが分かってきました。
例えば、ヨーロッパの草地で行われた研究では、高温・干ばつ・洪水などを人工的に再現し、土壌微生物がどう反応するのかを調べています【1】。
その結果は驚くべきものでした。
- 干ばつが続くと 微生物の多様性(種類の豊かさ)が減り、土の力が弱まってしまう
- 一度崩れたバランスは 元に戻らないこともある
- 高温は特に影響が大きく、微生物たちは休眠したり胞子になって身を守ろうとする
つまり、ふだんは目に見えない土の中にも、異常気象の「爪痕」がしっかり残るんです。
私たちが「庭の木が弱ってきたな」「畑の土が固くなったな」と感じる背景には、実はこの 小さな微生物たちの異変 も関わっているかもしれません。
「干ばつに強い微生物を土壌に撒いたら?」という発想💡
研究を読み進めるうちに、私の頭に浮かんだのはとても素朴な疑問でした。
「もし、干ばつに強い微生物をあらかじめ土にまいておいたらどうなるんだろう?」🤔
例えば、その土地の土壌がもともと乾燥や高温に慣れていない場合。
そんな場所でも干ばつに強い微生物を加えれば、土の性質や作物の育ち方が変わるのでは?と思ったのです。
実はこのアイデア、すでに世界各地で現実になりつつあります。
🌱オーストラリア発のアグリテック企業:Loam Bio(ローム・バイオ)
微生物を種にコーティングして、植物が育つときに生み出す炭素を安定的に土に固定。
これにより 水分保持力の向上・土壌の健康改善 だけでなく、炭素クレジットを通じて農家の収益にもつながる仕組みを展開しています【2】。
🌾アメリカ発のアグリテック企業:Indigo Agriculture(インディゴ・アグリカルチャー)
数万種の中から選ばれた有用微生物を種子にまとわせ、干ばつや塩害などのストレスに強い作物を育成。
AIやドローンも駆使して畑を解析し、農家の効率化や環境配慮を両立しています【3】。
🏔️バイオテクノロジー企業:Puna Bio(プナ・バイオ)
アルゼンチンの砂漠にすむ“極限環境微生物”を活用し、乾燥や高塩分に負けない作物をサポート。
劣化した土壌をよみがえらせる取り組みは、すでに南米で実用化され、アフリカの小規模農家にも広がりつつあります【4】。
かつては夢のような発想だった「微生物の力で干ばつに強い農業をつくる」という試みが、いま世界中で少しずつ形になり始めています。
お庭や畑の小さな土の一粒にも、未来の農業を変えるヒントが隠れているのかもしれません✨。
💬 コラム:炭素クレジットってなに?
少し専門的な言葉ですが、「炭素クレジット」 という仕組みがあります。
これは、土や森が空気中の二酸化炭素を吸い込んでくれた量を“見える化”して取引できるようにしたもの です。
例えば――
- 微生物の力で土にたくさん炭素をためる
- その「CO₂を減らした実績」がきちんと証明される
- 企業がその“環境貢献”をクレジットとして購入
- 農家さんには新しい収入が生まれる💰
つまり、環境にやさしい農業の取り組みが、そのまま 農家さんの収益にもつながる という仕組みなんです🌍✨。
化学薬品に頼らない、新しい農業のかたち
これまでの農業では、肥料や農薬に頼るのが当たり前でした。
でも今は、微生物や自然由来の素材を活かすことで、作物を守る方法 が研究・実践されています。
例えば――
微生物を活用した肥料(バイオインセウラント)
大麦を干ばつの中で育てる研究では、「乾燥に強い大麦の品種」と「有益な微生物(PGPRなど)」を組み合わせると、発芽や根の成長、光合成の力が大きく改善されました【5】。
微生物は、土の中で栄養を溶かしたり、植物ホルモンを作ったりして、乾燥によるストレスから植物を守ってくれるのです。
土そのものを改良する工夫
塩害を受けた綿花畑では、「ポリマー」という素材を土に混ぜることで、細かい土の粒(団粒構造)が整い、水を保ちやすくなりました【6】。
その結果、収穫量が増え、作物の安定した生育につながっています。
こうした研究から見えてくるのは――
農薬や化学肥料に頼らなくても、微生物や自然由来の資材の力で作物と土壌を支える未来 です。
干ばつや塩害のような過酷な環境でも、「生きものの力」や「自然の仕組み」をうまく組み合わせることで、農業はもっと持続可能な形に変わっていく。そんな新しい未来が少しずつみえてきました。
未来を支える“小さな存在”からの学び
異常気象という大きな課題に向き合うとき、解決のヒントは意外にも「目に見えない微生物」という小さな存在にあるのかもしれません。
土壌微生物を活かした農業は、環境への負荷を減らすだけでなく、作物の安定供給や地域の農業を守る力にもなります。
「農薬や化学肥料で支える」時代から、「微生物と共生して守る」時代へ――。
私が最初に抱いた「異常気象で土壌微生物はどう変わるの?」という素朴な疑問は、調べていくうちに「微生物が農業の未来を変えるかもしれない」という大きな可能性につながりました。
これからの農業は、薬品よりも微生物に支えられていくのかもしれません。
そしてその変化は、持続可能な社会や環境づくりにも直結していきます。
♻️ ニワナショナルの小さな取り組み
私たちニワナショナルも、SDGsの考え方を大切にしながら、地域の中でできることを続けています。
- 🌿 観葉植物の里親プロジェクト
育てられなくなった観葉植物を引き取り、新しいお家へつなぐ活動。 - 🔥 薪の無料配布
お庭の作業などで出た木材を処分せず、薪として無料で配布。 - 🌸 余った花苗の無料配布
シーズンごとに余った花の苗を、ご希望の方に無料でお渡し。
これらは個人のお客様はもちろん、子どもの体験学習や地域イベントでの法人利用にも応じています。さらに、上尾市内の法人の皆さまには無料で配送していますので、お気軽にご活用ください。
ご希望の方は「おすそわけページ」へ!
詳細やご相談は、以下の「おすそわけ情報」ページをご覧ください
👉 [おすそわけ情報はこちら]
私たちの活動はまだ小さいかもしれませんが、「お庭から、くらしと仕事をもっと豊かに。」という想いを、地域のみなさんと一緒に育てていきたいと思っています。
参考文献・研究リンク一覧
【1】Nature(2024)
「極端な気象(干ばつ・洪水・高温)に対する土壌微生物の反応」
👉 nature.com
→ 世界的な科学誌 Nature に掲載。土壌微生物が異常気象にどう影響を受けるかを調べた最新研究。
【2】Loam Bio
「微生物の力で土に炭素をためる技術」
👉loambio.com
→ オーストラリア発の企業。微生物を活用し、土の健康や水分保持力を高め、炭素クレジットで農家の収益にもつなげている。
【3】Indigo Agriculture
「微生物とデジタル技術で農業を支える」
👉 indigoag.com
→ アメリカのアグリテック企業。微生物でタネを守り、干ばつに強い作物を育て、炭素クレジットや独自マーケットプレイスも展開。
【4】WIRED(Puna Bio)
「過酷な環境で生き抜く微生物を農業に活用」
👉 puna.bio
→ アルゼンチン発のスタートアップ。砂漠などの極限環境で生きる微生物を使い、劣化した土壌の回復や収量向上を目指す。
【5】Frontiers in Plant Science
「干ばつ耐性を高める微生物(PGPR)の効果」
👉 frontiersin.org
→ 有益微生物(PGPR)が植物の栄養吸収やストレス耐性を助ける仕組みを解説した論文。
【6】MDPI Agriculture
「微生物資材による作物の干ばつ耐性強化」
👉 mdpi.com
→ 干ばつストレスにおける微生物資材(バイオインセウラント)の効果や最新研究をまとめた論文。